止めないで、直す

この時期になると、住宅とは別の窓口から相談が増えてきます。工場や倉庫、店舗、事業所といった建物の改修のご相談です。

菊池です。

なぜ夏の終わりかというと、多くの会社さんが下期の予算を組み始めるからです。「この夏はさすがに暑すぎた」「雨漏りをもう一年放っておけない」。そういう実感が新しいうちに、社内で話が動く。わたしたちのところに来るのは、たいていそのタイミングです。

こうした建物の工事が住宅と決定的に違うのは、お客様の商売が動いたままだということです。工場のラインは止まりません。倉庫にはトラックが入ってきます。店舗にはお客様が来ます。「工事のあいだ一週間休んでください」とは、こちらからは口が裂けても言えません。

ですから、最初にお聞きするのは仕様ではなく、時間割です。何曜日の何時なら音を出していいのか。どの通路をふさぐと物が動かなくなるのか。搬入は何時に来るのか。従業員の方の休憩室はどこか。それが分かってはじめて、工事を細かく切って並べ直す作業に入ります。一気に3日でやれば安く済む工事を、夜だけ、あるいは日曜だけに分けて六週間かける。結果としてそのほうが、お客様の損失は小さくなります。

粉じんと音も同じです。生産している物のすぐ横で削れば、それは製品に付きます。だから養生に手間をかけますし、匂いの出る材料は使う日を選びます。近隣にお住まいの方への挨拶も、事前に一度では足りないと思っています。

正直に申し上げると、こういう仕事は工程表がきれいになりません。細切れで、待ち時間もあって、効率だけを見れば褒められた工事ではないでしょう。それでも、お客様の会社が一日も止まらずに済んで、工事が終わったときに「気づいたら直っていた」と言っていただけたら、それが特殊建築のいちばん良い終わり方だと思っています。

建物を良くする工事で、お客様の商売の足を引っ張っては本末転倒ですから。

それでは、また。

No.7226

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