引き渡しの日は、始まりの日

夏休みも残りわずかという時期になりました。今週は、宿題の話をしているご家族の会話をあちこちで耳にしそうです。

菊池です。

先月、あるお客様のお宅の引き渡しに立ち会いました。鍵をお渡しして、設備の説明をして、書類にご記入いただく。玄関先で写真を撮って、お見送りする。何度経験しても、この日は独特の空気があります。うれしいのですが、少しさびしくもある。

ただ、わたしたちはこの日を「終わり」と呼ばないようにしています。理由は単純で、建物にとってはここからのほうが圧倒的に長いからです。工事期間は半年ほど。その後、その家は五十年、六十年と使われていきます。手をかけた期間の何十倍もの時間が、引き渡しのあとに残っている。

それなのに、家を建てたあと、どこに相談したらいいかわからないという方は本当に多いです。建てた会社と連絡が取れなくなった、という話も珍しくありません。網戸が破れた、棚を付けたい、水の出が悪い。工事と呼ぶには小さすぎて、かといって放っておくと気になり続ける。そういう困りごとの行き場が、意外とないんです。

わたしたちが「応援団」という仕組みをつくったのは、そこに理由があります。お客様を囲い込みたいからではありません。建てたあとに相談できる相手がいる状態を、こちらから用意しておきたかった。名前を応援団としたのは、支えていただく側でもあるという意識からです。おかげさまで、建てた家のことを一緒に考えてくださる方が、少しずつ増えています。

そして正直に言えば、これは会社にとっても必要なことです。建てて終わりにしてしまうと、自分たちの仕事が十年後にどうなっているかを知る機会がなくなります。あのとき選んだ材料が、どう変わったのか。あの納まりが正解だったのか。それを教えてくださるのは、住んでいる方だけです。

引き渡しの日にお渡ししているのは、鍵と、これから何十年かのお付き合いの約束です。少なくとも、そのつもりでお渡ししています。

それでは、また。

No.7223

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