家を建てるためには、土地が必要です。
なので、土地をご所有されていない方は、土地を購入する事になります。
そして、土地を購入した後に、建物の契約をし、着工⇒完成⇒引渡しというプロセスを経て、ご入居されることになります。
しかし、これはマイホームに入居されるまでの手続き・手順であり、セオリーではありません。
何のセオリーかと問われれば、豊かな暮らしを手に入れる・実現するための。
2010年に、弊社の代表が土地から購入される方々が注文住宅で家づくりをされる際に、失敗しないための考え方を書籍にしましたので、内容をこのブログで公開していければと思います。
そこに書かれてある思考は、出版された時も、今も変わりません。
限りある「予算」の中で、豊かな暮らしを実現数するための家づくりが、失敗と成功という両極端な結果になってしまうは、何故なのか?
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まえがき
「家を建てる」-----その大きな決断は、誰にとっても勇気の要るものです。
しかし、同時にそれは、本当にやりがいのあることであり、得られるものの大きさも測り知れません。
これから新しく造られる家には、お客様の希望が詰まっています。
子供たちの成長を見守りながらここで過ごす多くの時間は、幸せなものであってほしい……。
この願いは、私たち「家を造る側」にとっても同じです。
私たちの手がけた家が、お客様を不安にさせたり、生活を苦しくさせたりするものであってはなりません。
冒頭に「勇気の要るもの」と書きましたように、家を買うには多くの決断をしなければなりません。
お金のこと、子供たちの教育のこと、毎日の通勤・通学のことなどなど、考えなければならないことは山ほどあります。
だからこそ、焦りは禁物です。
家づくりにはある程度、長期的な視点を持ち、時間をかけて取り組むことが大切です。
そして、悔いのない家づくりのためには、やはり多少なりとも知識が必要です。
知識をつけることで、後で「こうすれば良かった!」という事態は必ず避けられます。
特に現在は、インターネット上に多くの情報が存在していますし、家づくりのための知識や情報も簡単に得ることができる環境にあります。
その半面、あまりにも多すぎる情報がかえってお客様を混乱させてしまって、正しい情報や本当に必要な情報を取捨選択することが非常に難しくなっています。
それでも、多くの情報の中からこの取捨選択に成功すれば、家づくりを成功に導く大きな一歩となるのです。
この本は、自分の希望の詰まった家を建てたい、家族の個性を生かした家を建てたい、といった注文住宅思考の方に向けて書かせていただきました。
私が住宅会社を経営し、さまざまなお客様と接する中で気付いた、正しい家づくり成功の秘訣を伝えるべく、手がけた本です。
溢れる情報の中で迷いが生じたら、この本を参考にしていただければと思います。
家づくりのプラスになることはあっても、マイナスになる要素は全くないものと自負しています。
決して、今すぐ家を買いましょう、急いで建てましょうという本ではありません。
大きな夢の実現のためには、時には現実を直視し、立ち止まって深く考えることも重要です。
あせらず、ゆっくり納得の行く選択をしていただくために、この本をお役立ていただければ幸いです。
「第一章:「土地がない」のは成功への近道
私は住宅会社を経営していますので、当然の事ながら家づくりをお考えの多くのお客様と接します。
この第1章では、たくさんの接客の中でつかんだ結論である「家づくりの秘訣」とも言うべき発想、あるいは考え方をご紹介します。
その秘訣は、通常、皆さんが考える家づくりのプロセスとはまったく違う方法と言えるでしょう。
本の冒頭でいきなり結論から入るのは、一番大切なことを初めに伝えることで、この本を手にとってくださったすべての方が、悲しい“夢減の家づくりから解放されて、楽しく希望に満ち溢れた家づくりをしていただけるように、との思いからです。
では、これからその秘訣について説明しようと思います。
家づくりで必ず必要なものが「土地」です。
これは当然です。そのために多くの、土地を持っていないお客様は、まずこの土地を探すために、通常は不動産屋さんへ出向きます。
普通に考えれば当たり前とも思えるこの行動が、えてして良からぬ方向へと進展してしまうことがあるとしたら……。
ここでは、一つ例を挙げて説明していきましょう。
神奈川県北部S市在住で、ご長男の小学校入学を前に、家づくりを計画されているAさん。
奥様と2人で、テレビCMでも名の知られた不動産屋さんへと出かけました。
新居を建てる土地を探すためです。
Aさんの予算は4300万円。漠然とではありますが「土地2000万円、建物2000万円ぐらいかなあ。そのほかにもいろいろ費用がかかると聞いているから、3000万円ほどみておきたいな」と考えています。
「あのー、すみません、家を建てたいので土地を探しているんですが……」
「いらっしゃいませ、どのような物件をお探しですか?」ベテランの営業マンがにこやかに応対します。
「30坪以上で、できれば駅に近いところが良いのですが」
「少々お待ちください」
しばらくして、営業マンは二つの物件ファイルを手に戻ってきました。
「こちらは32坪、駅徒歩5分、そして、こちらが36坪、駅徒歩12分ですね」
気になるのはやはり価格です。
32坪の方が2450万円、36坪の方は2100万円。いずれも当初の予算をオーバーしてしまいます。
しかし現在、駅から徒歩7分の賃貸マンションに住んでいるAさんにとって、駅徒歩5分の物件は実に魅力的に映ります。
そんなAさんの興味を見透かしたかのように、ベテラン営業マン氏は「32坪、駅徒歩5分」の物件に絞って、いよいよアタック開始です。
「駅から5分で1坪70万円台の物件は、このあたりではなかなか見つかりませんよ」
「でも、だいぶ予算オーバーなんです。土地は2000万円ぐらいまでと考えていたもので……」
「新築でしたね……。建物もすべて含めて、いくらぐらいでお考えですか?」
「4000万円ぐらいまでなら……」
「それでしたら、建物の方を少し抑えればいいじゃないですか。私どもで、安く建ててくれる会社をご紹介することもできますよ。なにしろ住まいは立地が第一ですから」
「いやー、しかし土地と建物のほかにも、仲介手数料とか、登記費用とか、いろいろ経費がかかると聞いていますし」
「諸経費ですか、そうですねえ、このケースでしたら200万円もみておけば十分でしょうね。残りの1350万円で、十分立派な家が建てられます。何度も言いますが、とにかく住まいは立地が第一ですよ」
初めて家をつくるAさんですから、巧みな営業マンの言葉には、ついつい誘導されてしまいます。
呪文のように「立地、立地」と唱えられ、やがてAさんの心は、当初考えていた予算を450万円もオーバーする、駅から5分の土地に大きく傾いていきます……。
結局、営業マンの「こういうお買い得物件は、すぐに売れてしまいますよ」との案内で、現地の確認もほどほどに、Aさんは駅徒歩5分の土地を購入することになりました。
その後、予算内で理想のご自宅も建てることができ、家族幸せに暮らすことができました。
めでたし、めでたし。
……となれば良かったのですが。
実際には、不動産屋さんが「200万円あれば大丈夫」と言っていた諸経費でしたが、いざ建物を建てる前に土地の地盤調査を行ってみたところ、購入した土地は地盤が弱かったために、家を建てるには地盤改良をする必要があることがわかりました。
その費用は約150万円。結局、不動産屋の営業マンが言っていた諸経費を大きく上回り、350万円以上かかってしまいました。
その結果、当初建築費用として考えていた予算、約2000万円は、約1200万円しかなくなってしまったのです。
家を建てた後のAさんは、後悔することしきりです。
建築費を抑えたばかりに、奥様から熱いリクエストが寄せられていた食器洗い機付きの最新式キッチンは、ごくありきたりのものになり、Aさん自身が「家を建てるならば絶対に欲しい」と思っていた書斎もなくなりました。
子どもたちと一緒に過ごす広いリビングも、夢破れて手狭なものになってしまいました。
また、一度現地確認に行った時には、まあまあの日当たりのように感じたはずなのに、実際に住んでみると、少し離れたところに建っている高層マンションのせいで、夕方以外はほとんど日が当たりません。
それに、何もなかった時は広く感じた土地ですが、現実的には駐車場がギリギリのスペースしか確保できず、車の出し入れに今も苦労する始末……。
さらには、あれほど欲しかった駅徒歩5分という立地ですが、夜の遅い時間まで人の行き来が多く、高層階に住んでいた時には意識しなかった騒音も気になります。
もし不動産屋さんに勧められるままに土地を買ってしまわずに、もう少し落ち着いて考える余裕があったら……。
Aさんのケースを「悲劇」とまでは言いませんが、これは建てた後に後悔することになる、典型的な例と言うことができます。
―――――続きは、また次回に。
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