子どものいない校舎で

八月の学校は、静かです。

グラウンドに人影はなく、廊下も暗い。そこに養生シートが敷かれ、脚立が並び、職人の声だけが響いている。学校の改修工事というのは、たいていこの時期に集中します。

菊池です。

わたしたちは注文住宅のほかに、特殊建築という柱を持っています。学校、公民館、病院、社屋や工場。相模原市内の小学校や、田名公民館の改修工事も手がけてきました。

このうち改修工事には、新築とはまったく違う難しさがあります。

ひとつは、期限がびくとも動かないことです。夏休みが終われば、子どもたちは戻ってきます。始業式の日に廊下が塞がっている、という選択肢は最初から存在しません。工程を組むというより、逆算して詰めていく作業に近い。

もうひとつは、開けてみるまで分からないことがある、という点です。図面はあっても、その後の改修が反映されていない場合があります。壁を剥がしたら配管の通り方が違った、下地の傷みが想定より進んでいた。そういうことが起きたときに、残りの日数の中でどう組み替えるか。ここが、いちばん腕の要るところだと思っています。

そして、閉めたあとに人が戻ってくるということ。塗料の匂い、床の段差、ビスの一本まで、翌週には子どもたちが触ります。掃除して引き渡して終わり、では済みません。

もう少し言うと、学校の改修は「使い方が変わっていく建物」を相手にする仕事でもあります。建てられた当時と、いまとでは、求められるものが違います。教室の使い方も、空調の考え方も、避難の想定も変わりました。図面どおりに戻すのではなく、これから何十年かをどう使うのかを、発注者と一緒に確認しながら決めていきます。

学校でも公民館でも、建てるより直すほうが地味な仕事です。新しくなったことに気づかれないまま、また何十年か使われていく。それでいいのだと思っています。使う人にとっては、工事の巧拙より、いつもどおりに始まることのほうが大事です。

それでは、また。

No.7210

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