主治医、という言い方

先日、若いスタッフに会社案内の内容を説明していて、自分でも改めて考え込んだ言葉がありました。

菊池です。

わたしたちは会社の紹介の中で、自分たちのことを「建物の主治医」と書いています。そして「命の視点から建物を見る」という言い方をしています。建設会社の説明としては、少し変わっていると思われるかもしれません。

創業は昭和三十五年です。相模原、町田、八王子を中心に、六十年以上この仕事を続けてきました。その間に建て方も材料も大きく変わりましたが、途中で強く意識するようになったのが、建物が人の体に及ぼす影響でした。シックハウスという言葉が世に出て、建物のせいで具合が悪くなることがあると知られるようになった時期です。

正直に言えば、建設業界全体がその視点に慣れているとは、いまも思っていません。図面の納まりや工期や金額の話はいくらでも上手になるのに、そこで毎日呼吸する人のことは、後回しになりやすい。自戒を込めて書いています。

「主治医」という言い方を選んだのは、たぶんそこに理由があります。専門医は難しい症例を治しますが、主治医の役割は少し違います。普段のその人を知っていること。前はどうだったかを覚えていること。そして、まだ症状が出ていない段階で「ちょっと様子を見ましょうか」と言えること。建物に対して、わたしたちがやりたいのはそちらのほうなんです。

だから引き渡しのときに、ここで区切りです、という気持ちにはなりません。むしろ、カルテの一ページ目が書き終わったところだと思っています。十年後に「あのときこうしましたよね」と話せる相手でいたい。そのためには、建てるときの判断も、十年後に説明できるものでなければいけない。

会社としては「サービスを超えた感動を提供する」という言い方もしています。壮大に聞こえますが、現場でこれを翻訳すると、案外地味な話になります。言われる前に気づく。覚えている。それだけのことを、何十年も続けられるかどうか。

まだできていないことのほうが多いです。だからこそ、書いて残しておこうと思いました。

それでは、また。

No.7219

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