段差ひとつが、暮らしを分けることがある

来週は敬老の日を迎えます。この時期になると、高齢者施設や福祉施設のご相談を振り返ることが増えます。

菊池です。

わたしたちが手がける特殊建築の中には、デイサービスや高齢者向けの住宅といった、福祉に関わる建物があります。住宅の設計とは、考えることの重心が少し違います。住宅では「暮らしやすさ」を家族単位で考えますが、福祉施設では、体の状態がそれぞれ異なる方々が同じ空間を使うことを前提に考えなければなりません。

たとえば、廊下の幅を数センチ広げるだけで、車椅子とすれ違えるかどうかが変わります。床の段差を2センチなくすだけで、つまずく確率は大きく下がります。健康な体で歩いている時には気づきにくい差ですが、体力や視力が少しずつ変わっていく方にとっては、その2センチが「ひとりで歩けるかどうか」を分ける境界線になることがあります。

もうひとつ大切なのが、スタッフの動線です。利用者の方の安全を守りながら、日々の業務を効率よくこなせるかどうか。ここが計画できていないと、現場で働く方の負担がそのまま積み重なっていきます。使う人と、支える人。両方の視点を同時に満たす設計が求められる分野です。

住宅とは違う難しさがある一方で、根っこにある考え方は同じだと感じています。そこで過ごす人の毎日を、どれだけ具体的に想像できるか。図面を引く前に、その場所でどんな一日が流れるのかを思い描くことから、わたしたちの仕事は始まります。

それでは、また。

No.7247

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