「5年後、10年後、この建物をどう使っていますか」

今日は特殊建築の話を書かせてください。

菊池です。

わたしたちの言う特殊建築とは、住宅ではない建物のことです。工場や倉庫、店舗、事務所、福祉施設。用途はさまざまですが、共通しているのは「そこで事業が動いている」という点です。

住宅とのいちばん大きな違いは何かと聞かれたら、わたしは「変わることが前提になっている」と答えます。ご家族の暮らしも変化しますが、事業の変化はもっと速い。取り扱う商品が増える、機械を1台足す、人が5人増える。そういうことが、竣工から3年も経たないうちに起きます。

ですから、ご相談をいただいた時、わたしたちが必ず一度は伺うのが「5年後、10年後、この建物をどう使っていますか」という質問です。今のご要望だけで設計すると、今にぴったり合った、そして数年後には合わなくなる建物ができあがります。

たとえば倉庫であれば、柱をどこに立てるかで、将来の棚の並べ方まで決まってしまいます。床の耐荷重を今の荷物に合わせて決めるのか、重い設備が入る可能性まで見ておくのか。電気の容量に余裕を持たせるかどうか。将来、隣に建て増す可能性があるなら、どちらの方角を空けておくか。どれも、後から変えるとなると桁違いの費用がかかる部分です。

こう書くと「余計にお金がかかる提案なのでは」と思われるかもしれません。実際には、逆のことのほうが多いです。将来の可能性を先に整理しておくと、今は要らないものがはっきりします。何を入れて何を入れないかを決められるので、かえって無駄が削れる。

建物は事業の道具です。道具は、使う人の手に合っていて、長く使えるほうがいい。図面を引く前の雑談のような時間に、いちばん大事なことが出てくる。この仕事を続けていて、そう感じています。

それでは、また。

No.7241

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