注文住宅を選択した時、思い描くマイホームは百者百様です。
日本家屋、洋風建築など、100世帯あれば100のこだわりがあるもの。たくさんのアイデアやこだわりを実現するために、施主がやっておくとよいことがひとつあります。
それは、手描きで家の設計図を書くこと。
設計図とはいかずとも、ラフスケッチがあるだけで、注文住宅のクオリティはぐんとあがります。
広くゆったりくつろげるリビングルーム、笑顔の絶えないダイニングキッチンなど、夢描くマイホームを心のままに描いてみましょう。
「リビングが吹き抜けだったら開放感もあって広々とするのだろうなぁ」
「広い車庫があったら、駐車以外にも使えるかもしれないなぁ」
どんどんイメージをふくらませながら、とにかくまずは描いてみることです。
間取りをしっかり描くことができなくても構いません。メモ程度の雑なものでもよいですし、「こんなイメージ」といった画像を、切り抜いて貼り付けて作っていっても構いません。
そして、最初に作ったスケッチは、コピーしたり、写真で保存したりするとよいでしょう。
徐々に推敲を重ねていくことになりますが、一番最初のイメージは、後々重要になる場合が多いのです。
ポイント
まずは理想のおしゃれなマイホームの設計図(ラフスケッチ)を手描きしてみる!
そして、一番最初のスケッチを取っておく。
設計段階で考えるべき熱効率の重要性
ざっくりと設計図が完成したら、その設計図を見ながら「熱効率」を考えてみましょう。
日本の気候は、気候分布で言えば温帯湿潤気候。年間通して気温の差が激しい島国です。「夏は雨が多く、冬は乾燥する」といった特徴を持っています。
日本の一戸建ては、常にこの気候に晒されています。
マンションはその構造上、外気に晒されている部分は少ないのですが、一戸建ては日本の気候をダイレクトに受けざるを得ません。
可能であれば、夏は涼しく、冬は暖かい、快適な一戸建てが理想です。
設計図を見ながら、まずは家の中で一番広くなるであろうリビングの熱効率を考えてみましょう。
注文住宅ではリビングの熱効率が重要
広すぎるリビングは、温めたり冷やしたりする面積が大きくなるため、エネルギー消費が増え、結果的に年間の冷暖房費が高くなります。また、部屋全体が均一な温度になりにくく、特に暖かい空気は上にたまりやすいので、足元が冷えやすくなります。これは小さなお子様がいらっしゃる世帯にはあまり芳しくない状態です。
逆に、狭すぎるリビングは、動線の確保が難しく、混雑して快適な生活空間を保てません。また、収納スペースも限られるため、物があふれやすくなります。圧迫感のある空間になりやすいので、家族が集まる場所としては不向きでしょう。
程よいサイズのリビングは、世帯の家族構成、動線と収納などを見直すとわかってきます。
一般的には4人家族の場合、15~20畳程度が目安となることが多いです。
これらを前提に、最終的なリビングの熱効率を見直しましょう。どうしてもわからない場合は、設計図に書き込み、設計士に相談するポイントとしてリストしておきましょう。
ポイント
世帯の家族構成、動線や収納などを考えて、程よいサイズのリビングをイメージする。
注文住宅は家族との関係を考えて設計しましょう
マイホーム建築はやり直しがきかないため、「こんなはずでは…」という後悔を減らすことが重要です。そのためには、家族とのコミュニケーションを重視して設計を行う必要があります。
家は人が住むことで家庭になります。家庭とは、家族とのコミュニケーションが発生する場所であり、各部屋はその用途ごとに使われます。
家族が増えることや、親と同居することもあるため、用途は必然的に増えていく可能性を持っています。
良い設計ができるお客様は、家族全員で設計に関わり、設計士とのコミュニケーションを大切にしてくださいます。このような家庭では、家族のコミュニケーションが見える設計ができ、設計の根幹となります。
- 「子どもができたら、どの様に育てていきたいか?」
- 「子どもが小さなうちは、どこからでも子供に目が届くようにしたい」
- 「子どもが大きくなったら、部屋を与えてあげたい」
- 「将来は親と一緒に暮らしたいから、二世帯で住める様にリフォームのしやすい家にしたい」
- 「大きくなったら、喧嘩が起きることもあるだろう。それぞれ、リビングを通らないで二階に上がりたい時もあるかもしれない」
- 「共働きで忙しいから、家事動線はしっかりしたい」
こうした思いを、私たちは「設計思想」と呼びます。
家族の思想を大切にして家を設計していくことが、「良い家」の根幹になると言えます。
重要なのは、ご家族がどんな関係にあり、日ごろからどんなコミュニケーションをとっているか、なのです。
設計思想がないとどうなるのか
「子育て中心にして考える家。おじいちゃん、おばあちゃんと暮らす家。娘が何人、何歳、息子が何人……」
こういった「設計思想」のない情報のみだと、教科書のような家しか作ることが出来ません。それは「だれのために作っているのか」を全面に出せない、「大手住宅メーカーのTVCM」によく出てくる、見た目だけのお家のようなものです。
建売住宅とは異なり、注文住宅は「自分たちのためだけの家」を実現するためのものです。設計思想はその実現のために必要な情報と言えるでしょう。
土地と採光を注文住宅の設計に反映させる
リビングの見直しと家族とのコミュニケーションを重視して設計図を描いた後は、土地と採光を考慮することが重要です。日当たりの良い家と悪い家では、住み心地に大きな差があります。
注文住宅を建てる土地を選ぶ際には、以下のポイントに注目しましょう。
- 風の強さ: 風の通り道を確認することで、通風を確保できます。
- 周囲の建物の密集度: 密集していると日当たりが悪くなる可能性があります。
- 将来の建物の予定: 近くに空き地がある場合、将来建物が建つかもしれません。
風の通り道を把握する
周りの建物や公園などを確認し、将来の障害物になる可能性がないかをチェックします。また、風が吹いてくる方向を現場で確認し、風の通り道をメモしておきましょう。
風の通り道を確認すると、風の強さを考慮して家を設計することができます。風の流れを確保し、適切な窓の配置や通風経路を設計に取り入れると、風通しの良い家を実現できます。
土地が持つ採光の利点を活かす設計
土地の周囲に建物は密集していますか?
土地の向きや形状は様々ですが、太陽が昇るのは東、沈むのは西です。この自然の動きを考慮して設計することで、日当たりの良い家を実現できます。また、その際に周囲の建物を確認することも重要です。
注文住宅の大きなメリットは、地の利を活かした設計ができることです。南に窓を多く配置することで、日光を最大限に取り入れることができます。これにより、日中の照明が不要になり、冬は暖かい日差しが差し込む快適な空間を作れます。
また、土地を目の前にして、三次元での把握が重要です。土地の形状や周囲の建物の密集度などの環境を確認しながら、冬至や夏至の太陽の動きを考え、採光について計画を立てましょう。コンパスを持って東西南北を確認し、土地の中心から周囲を見渡してみることも大切です。
将来の建物の予定を考慮した設計
将来の建物の予定を考慮して、土地の利点を最大限に活かす設計をしましょう。近くに空き地がある場合、将来建物が建つ可能性があるため、その影響を予測して設計を進めることが重要です。周囲の環境や将来の変化を見越した設計を行い、長く快適に住める家を目指しましょう。
ポイント
土地を見ながら、三次元での把握を元に縦向きの設計図を描いてみましょう。
風の通り道、朝日や西日の入り方、冬の太陽の位置などを考慮しながら、具体的な設計図を描くことが重要です。
家族の健康と家の寿命、家の予算に関わる「建材」
家族と何年「心地よく住む」か
日本の家屋の寿命は世界的にみても短いと言われています。
戦後まもなく出た新建材に、「合板」や「集成材」といったものがあります。
合板とは
薄い木材の板(ベニヤ板)を接着剤で重ね合わせて作られた建材。天然木材よりも割れや反りが少なく、強度は高いが、時間が経つと、使用されている接着剤が劣化し、合板の層間剥離が発生する可能性があります。また、水や湿気に弱い場合があり、防水処理が必要となります。
集成材とは
複数の木材の薄片を接着剤で張り合わせて一つの構造材にしたもの。構造的に非常に強度が高いが、接着剤の劣化が長期間の使用で問題となることがあります。
合板や集成材は、多くの場合接着剤で複数の薄板を貼り合わせて作られています。この接着剤には有害な成分が含まれている場合があり、揮発性有機化合物(VOC)の問題が発生することがあります。シックハウス症候群などといった問題につながる可能性が示唆されています。
第二次世界大戦後の日本では、急速な都市化と復興が進み、建材の需要が急増しました。これに対応するために、効率的かつ大量生産が可能な合板や集成材が広く普及したのです。
これらの新建材は、天然木材に比べて経済的であり、構造的にも安定しているため、迅速かつ効率的に建築するために、多くの住宅の建設で採用されました。
ですが、耐久性や住む人の健康面での懸念があることは事実です。
注文住宅を建てる際に、建材の選択は非常に重要だと言えるでしょう。
この建材の扱いは、ハウスメーカーと設計士・工務店で違いがあります。
ハウスメーカーと設計士・工務店の建材の扱いの違い
多くの人があきらめてしまった家を再生させるため、設計士と工務店が知恵を絞って、設計から完成までを手がけるリフォーム番組があります。ハウスメーカーが無理だと言った間取りも、彼らが実現しています。
これは、ハウスメーカーができる仕事と、設計士と工務店ができる仕事が異なっているためにおこる現象です。
ハウスメーカーができる仕事
多くの人がマイホーム建築を考える際、まずハウスメーカー(量産住宅メーカー)の展示場を訪れることが多いでしょう。ハウスメーカーには得意分野があります。
彼らは大量の建材や構造パーツを使い、企画に基づいた家づくりを得意としています。建材をはじめとする構造パーツが「規格もの」として大量に存在し、また種類が決まっています。規格化されたパーツを効率よく組み合わせることで、コストを抑えたり工期を短縮したりすることができるのです。
しかし、土地の形状が変わってくると、その規格パーツがうまくはまらないことがあります。
この場合、ハウスメーカーは建材や構造パーツを変形することができません。間取りなどの設計の方の変形を余儀なくされるのです。
設計士・工務店ができる仕事
設計事務所や工務店は、お客様の土地や希望に合わせて、一つ一つの家の設計と建築を行います。土地の形状に応じて建材をカットしたり、最適な構造パーツを選んだりします。ここで大きな違いが生まれるのは、「融通性」です。設計士・工務店は、お客様の希望する間取りや思想設計はそのままに、建材や構造パーツを変形してそれに対応できるのです。
見積もり時点で決まる家の寿命と家族の健康
マイホームを建てる際、建材にかかる費用は予算の大きな部分を占めます。
これらの建材は家族と共に長い年月を過ごすことになります。
住宅設計ではよくあることですが、見積書に記載された建材の名称が理解できないことや、価格が高いのか安いのか判断できないことがあります。予算は考慮しなければなりませんが、奇妙な名前の建材を軽く見過ごしてしまわないようにしましょう。
将来、自宅が「廃材の巣窟」とならないように、建材についての知識を身につけておいて損はありません。例えば、「柱、床、壁」など、家族の健康や安全にとって重要な建材について知識を深めましょう。
家族の健康はお金で買えないものです。注文住宅の設計図がある程度描けたら、建材の選択にも注意を払い、良質な建材を適正な価格で選ぶことの重要性を確認していきましょう。
相陽建設株式会社は、「住むと健康になる」という医学的根拠を持った自然素材住宅を取り扱っています。
注文住宅の地震対策と構造計算
一般的にマンションの建築では構造計算が行われ、安全性が確保されていますが、日本の家屋では法的には構造計算が必須ではありません。しかし、安全性を考慮するなら構造計算は推奨されるべきです。おしゃれな家は高価ですが、その背後には構造の安全性が見え隠れしています。
耐震対策についても、ハウスメーカーと注文住宅では柔軟性が異なります。注文住宅は、ハウスメーカーと違い、耐震設計を維持しながらかなり柔軟な設計に対応できます。
2×4工法や他の工法の導入は、設計の初期段階で決める必要はなく、最適な選択肢を見極めることが重要です。
2×4工法(ツーバイフォーこうほう)とは?
2×4工法(ツーバイフォーこうほう)は、主に北米で一般的に使われている木造建築の一種です。この工法は、主に2インチ × 4インチ(実際の寸法は約38mm × 89mm)の木材を使って壁を構築する方法を指します。
具体的には、柱(スタッド)として2インチ × 4インチの木材を使い、その間に断熱材や防湿シートを組み込みます。外壁材や内装材を貼り付けて、壁を完成させます。この工法は、木材の使いやすさと断熱性能の高さから、住宅の建築に広く利用されています。
日本でも近年、省エネルギー性や耐震性の向上を目的に、2×4工法を採用した住宅が増えています。
安全な家とは、「いざという時」と「長く住む時間」の両面で考える必要があります。「いざという時」のための耐震構造は重要ですが、「長く住むための」基礎についても留意しましょう。