二世帯住宅の建設では、「夫(妻)の親にお金を出してもらった」というケースがよくあります。子世帯にとっては、親に金銭的な負担をしてもらうのはありがたいこと。しかし、よく考えずに一方的に親に「貸し」を作ってしまうのも考えものです。
親にお金を出してもらったということは「親に頭が上がらなくなる」ということも意味しています。親夫婦と子夫婦、二世帯で暮らす住まいなのに、「全部自分のもの」のような気持ちで振る舞うようになってしまうことも考えられるのです。子世帯の持ち物を勝手に使ったり、夫婦の寝室に勝手に出入りしたり・・・といったプライバシーの侵害が起こる可能性も・・・。こうした、二世帯住宅における「親世帯によるプライバシーの侵害」を防ぐにはいったいどうしたらいいのでしょうか。
「寝室に入らないで」は無視される可能性がある
真っ先に考えられるのは、勝手に子世帯の専有スペースに入ってこないよう、親世帯にお願いしておくことでしょう。「親子といってもプライバシーはあるんだから」とお願いすれば、「嫌だ」といわれることは少ないかもしれません。
しかし、仮に「プライバシー保護のための取り決め」をしていたとしても、実際に親世帯が取り決めを守ってくれなければ意味はありません。
「子どもは出かけているし、今のうちなら出入りしても大丈夫だろう」 「ちょっと日用品を借りるだけだから」といった軽い気持ちで、あっさり取り決めを破ってくることも考えられるのです。「専有スペースに入らないように約束した」と問い詰めたとしても、「細かいことを言うな!」「誰のお陰でこの家に住めていると思ってるんだ!」と言われてしまえば、強く反論することはできません。
「親にお金を出してもらっている」という時点で、子どもの発言権はかなり弱いものになってしまうのです。
専有スペースの入り口に鍵をかけよう
お願いしてもダメなら、物理的に親が専有スペースに入れないようにするという方法もあります。専有スペースと共有スペースとの境目の扉に鍵をかけてしまうのです。そうすれば、どれだけ親が勝手に専有スペースに入ろうとしても、簡単に入ることはできません。
問題は、鍵をつけること自体を親に反対されないかということですが、「貴重品があるから、防犯用に」と言っておけば反対されることは少ないでしょう。ただし、専有スペースを通らなければ行くことのできない位置に物置や共有スペースがあると、「合鍵をよこせ」と言われてしまう可能性も。ある程度間取りに制限される方法なので、計画時点から考えておくといいでしょう。
完全にプライバシーを確保するなら完全分離型
子世帯のプライバシーを尊重してくれるかどうかは、親の性格に左右されるところが大きいといえます。男兄弟しか育てたことのない「頑固親父」といったタイプの親だと、最初から「プライバシーを尊重しなければ」という意識が乏しいことも十分に考えられます。そうした親との二世帯住宅暮らしを考えている場合は、最初から「完璧にプライバシーを守れる方法」を準備しておきましょう。
その方法とは、完全分離型の二世帯住宅を選択することです。完全分離型二世帯住宅なら、家は玄関から寝室まで完全に別々。おまけに玄関から入らなければ相手の住まいに入ることはできないため、完璧にプライバシーを確保することができます。
ただし、家の合鍵を渡してしまうとプライバシーを確保することはできないので注意しましょう。特に小さいお子さんがいる家庭では、子どもに合鍵を渡すときは注意しましょう。祖父母から「おうちにいれて」と言われれば、孫は断りづらいもの。おまけに、小さいお子さんであれば「プライバシーを守らなければ」という意識もありません。あくまで家の出入りは夫婦で管理するよう努めれば、自分たちのプライバシーを親から守ることができるでしょう。